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#003S0解体される金融2026.06.15

データで見る日本のキャッシュレスと送金の現在地——数字が示す不可逆な変化

Voyage Architect 編集部

キャッシュレス決済比率は2021年の32.5%から2024年の42.8%へ。公的統計から、日本の決済・送金に起きている「不可逆な変化」を、その読み方の限界も含めて確認します。

現金を使う頻度が減り、銀行の窓口に行く機会もほとんどなくなった——その実感は、公的統計の上でもはっきりと現れています。概念として整理してきた「金融機能の分解」が、実際にどこまで進んでいるのかを、数字で確認します。

#001#002では、金融機能が「分解」され、BaaS・エンベデッド・ファイナンス・APIエコノミーという形で再編されつつあることを概念的に整理しました。この記事では、その変化が実際にどの程度進んでいるのかを、公的統計をもとに確認します。

キャッシュレス決済比率の推移

経済産業省が公表している国内のキャッシュレス決済比率は、2021年の32.5%から2024年には42.8%(141.0兆円)まで上昇しました。2021年の内訳はクレジットカードが27.7%、デビットカードが0.92%、電子マネーが2.0%、コード決済が1.8%でしたが、2024年にはクレジットカードが82.9%(116.9兆円)、デビットカードが3.1%(4.4兆円)、電子マネーが4.4%(6.2兆円)、コード決済が9.6%(13.5兆円)という構成へと変化しています。とりわけコード決済は2021年の1.8%から2024年の9.6%まで拡大しており、比較的新しい決済手段が急速に存在感を増していることが分かります。

なお、経済産業省は持ち家の帰属家賃などを除いた新しい算出方法も導入しており、新指標で算出した2024年の比率は51.7%と、従来の算出法より約10ポイント高くなっています。指標の取り方によって数値が変わる点には注意が必要です。

送金・決済インフラの利用構造の変化

決済比率だけでなく、送金の領域でも構造的な変化が進んでいます。2022年10月には、銀行口座を介した従来型の振込とは異なる個人間送金の仕組み「ことら送金」のサービス提供が始まりました。ことらシステムを通じた10万円以下の個人間送金は、預金取扱金融機関だけでなく資金移動業者にも接続を開放しており、全銀システムをはじめとする既存の仕組みと最新のIT技術を組み合わせることで、携帯電話番号などを使った利便性の高い送金サービスを安価に提供することを目的としています。

利用者から見える「決済比率」と、その裏側にある「送金インフラの選択肢の広がり」は、同じ構造変化の異なる側面です。本記事では、この両面が同時に動いているという点を確認しておきます。

進み方の差——世代・業種による違い

ここまで述べた変化は、日本全体で見れば一方向の傾向ですが、進み方には差があります。業種別に見ると、個人経営の飲食店、理美容室、クリーニング店、病院等では、キャッシュレス決済が使えないと認知されているケースが見られるという調査結果があります。

一方、世代別・性別の利用頻度の差については、調査によっては大きな違いが見られないとする結果もあり、当初想定していたほど単純な「若年層ほど進んでいる」という構図ではない可能性があります。この点は、自社の顧客層を分析する際に、思い込みではなくデータに基づいて確認することが重要になります。

このデータが示す「不可逆性」とは何か

これらの数字が示しているのは、単なる「比率の上昇」ではなく、利用者の行動習慣そのものが変化している、という点です。2021年から2024年の3年間で10ポイント以上比率が上昇し、その内容も特定の決済手段(コード決済)が急速に拡大するという形で進んでいることから、一度キャッシュレス決済や新しい送金手段に慣れた利用者が、その後に再び現金中心の行動へ戻ることは、構造的に考えにくいというのが実務上の整理です。これは、景気変動のように上下を繰り返す指標とは性質が異なり、習慣の変化という、より戻りにくい性質を持つ変化だと捉えることができます。

データの限界と読み方の注意

ここで紹介したような統計を読む際には、いくつかの注意点があります。第一に、経済産業省自身が算出方法を見直し、新旧の指標で10ポイント程度の差が生じているように、各統計は調査機関や算出方法によって数値が変わるため、単純に数値だけを比較すると実態とずれる場合があります。第二に、これらの統計は「利用された決済・送金の量」を示すものであり、企業側の導入・運用の負荷や、実際の業務フローへの落とし込みやすさといった、データには現れない実務上の課題までは示していません。数字が示す方向性は参考にしつつ、自社の状況に当てはめる際には、こうした限界を踏まえた読み方が必要になります。

この記事の判断ポイント

  • 日本のキャッシュレス決済比率は2021年の32.5%から2024年の42.8%まで上昇し、特にコード決済の拡大が目立つ
  • 送金領域でも、ことら送金のような新しい個人間送金の仕組みが2022年から提供されており、構造的な変化が進んでいる
  • ただし、業種による差は明確に見られる一方、世代差については単純な構図ではない可能性があり、データの限界を踏まえて自社の状況に当てはめて読む必要がある

出典: 経済産業省「キャッシュレスの現状及び意義」等の公表資料。最新の数値は原典をご確認ください。

監修: K(実務監修)

FAQ

よくある質問

日本のキャッシュレス決済比率はどのくらいですか?

経済産業省の従来指標で2021年の32.5%から2024年には42.8%へ上昇しました。特にコード決済が1.8%から9.6%へ拡大しています(帰属家賃等を除く新指標では2024年は51.7%)。

送金の領域ではどんな変化がありますか?

2022年10月に、携帯電話番号などで10万円以下を送れる個人間送金「ことら送金」が始まり、預金取扱金融機関だけでなく資金移動業者にも接続が開放されるなど、送金インフラの選択肢が広がっています。

この変化はなぜ「不可逆」と言えるのですか?

比率の上昇が利用者の行動習慣そのものの変化を伴っており、景気のように上下する指標と違い、一度慣れた決済・送金手段から現金中心へ戻ることは構造的に考えにくいためです。ただし統計は算出方法で数値が変わる点に注意が必要です。

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